boogyman's memo

アニメーションと余日のメモ欄

話数単位で選ぶ、2017年TVアニメ10選

年末の風物詩(?)、今年放送されたTVアニメの中からエピソード単位で10本選ぶ、「話数単位で選ぶ、TVアニメ10選」。

以下、コメント付きでリストアップ。

■ 『魔法つかいプリキュア!』第49話「さよなら…魔法つかい!奇跡の魔法よ、もう一度!」

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脚本/村山功 絵コンテ/三塚雅人、大塚隆史 演出/三塚雅人 作画監督/宮本絵美子

情緒をダイナミズムに、言の葉を現実に変換する演出家・大塚隆史プリキュア史上初の大学生編となったBパートは、どこかアドレッセンス(青春)の抜け殻のようなみらいを哀調を帯びた構図で切り取りながら、思いの繋がりが生んだ奇跡へと大ジャンプ。夜空に浮遊する涙と笑顔、これがプリキュア大塚隆史だ。

 

■『亜人ちゃんは語りたい』第4話「高橋鉄男は守りたい」

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脚本/吉岡たかを 絵コンテ・演出/石井俊匡 作画監督/ 川﨑玲奈

痛々しくも目が離せない。このドラマの行く末を見届けたい。石井俊匡を語るなら、そんなときがいい。心の尖端を突くメタファーとサスペンスフルな雰囲気でドラマを作らせたら、いまや指折りの演出家だ。本作でもそれはいかんなく発揮されている。第11話の挑戦的な長回しにも惹かれたのだけれど、ここでは「亜人ちゃん」のアレゴリーを様々な暗喩で表現した第4話を選択。雨と音、紫陽花に注目。

 

■『小林さんちのメイドラゴン』第6話「お宅訪問!(してないお宅もあります)」

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脚本/山田由香 絵コンテ・演出/三好一郎 作画監督/丸子達就

 「わたし、雨好き」。ラストシーンでカンナはつぶやく。

木上益治ファンは水と境界に弱いのだ。『Free!』の泳ぎとエフェクトに身悶え、『MUNTO』に登場する多種多様な境界に喜びを見いだしてきた。だから、カンナのつぶやきには歴史と説得力がある。小林さんちと「ふつうの世界」を隔てる水溜り、雨。ねちっこく、暴力的な作画も充実のマスター木上。まだまだ後輩には譲らない!

 

 ■『けものフレンズ』第12話「ゆうえんち」

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脚本・絵コンテ・演出/たつき 作画監督/伊佐佳久

3月29日深夜1時35分、期待と緊張が交錯していた。固唾を呑んで見守る、という言葉がこれほど相応しい時もない。かばんちゃんを返して! と叫ぶサーバルに涙を溜め、王道を往くフレンズ大集合に熱くなり、火のついた紙飛行機に長い旅路を思い起こす。瞬く間に過ぎ去る放送時間。体の芯に残る余熱。ああいう体験をまたしたい。

 

■『タイガーマスクW』第38話「仮面タイガー スプリンガー」

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脚本/千葉克彦 絵コンテ/渡邊巧大 演出/鎌谷悠 作画監督/渡邊巧大

実質的な最終回は37話で、この回は気楽な番外編だろうと思っていたら、とんでもない。東映アニメーションの俊英・渡邊巧大が初の絵コンテを担当し、自ら修正を入れることによって“超”意欲的なエピソードが誕生。動きの多彩さは言うに及ばず、かつての細田守を彷彿とさせる影なしの画作りや春奈の百面相、目を引くレンズワーク。意外性が次第に興奮へと変わる、本年ベストエピソードのひとつ。

 

 ■『プリンセス・プリンシパル』第9話「case11 Pell-mell Duel」

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脚本/大河内一楼 絵コンテ・演出/迫井政行 作画監督/鶴窪久子、飯田剛士、金丸綾子、小堺能夫、小松香苗

ユーモラスで、賑やかで、凛としていて芯がある。ちせのロンドンウルルン滞在記。異郷の地で暮らすちせの生活風景は騒がしく、チャーミング。しかし悪意はにじり寄って来る。その対処と仲間の気遣い、勘違いが見どころだ。姉に手紙を認める体のモノローグも効果的。ちせの素直な心根が、本作の「嘘」を引き立たせる。

 

■『Just Because!』第1話「On your marks!」

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脚本/ 鴨志田一 絵コンテ/小林敦 演出/須之内佑典 作画監督/吉井弘幸 中野圭哉

アバンタイトル、スクーターにまたがった恵那のカットからベン・E・キングの「Stand By Me」をかけてみるといい。小林敦監督のコンテには気分をあらわしたものだろう、【「Stand By Me」ならここら辺から「When the night」】と書かれている。陽斗の祖父が吐くタバコの煙にピッタリだ。白い吐息と広がっては消えていく紫煙が働きかける表象、そして側にいて欲しい、支えたいと何度も歌う音楽。『Just Because!』が訴えかけようとしているものは、ここに詰まっているんじゃないかという気がする。

 

 ■『干物妹!うまるちゃんR』第7話「うまると遊園地」

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 脚本/杉原研二 絵コンテ・演出/上坪亮樹 作画監督/天﨑まなむ、立口徳孝
平塚知哉、河島裕樹、保村成、渡辺舞、中野裕紀

きりえちゃんはかわいい。人見知りな性格も、緊張のあまり上手く喋れないところも愛らしい。上坪亮樹はそんなきりえを光と影でレイアウトする。泥沼のネガティブ思考に陥り、真っ暗になった観覧車。うまるは眩い笑顔を携え、そっと寄り添い心を照らす。映像と心情の合一性がかもす、上坪演出の妙。幼少期の熱にあてられた海老名ちゃんもよい。

 

■『ぼのぼの』第88話「おねえさんが帰らない」

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脚本/広田光毅 絵コンテ・演出/西村純二 作画監督/今野淑子

土曜朝、4時52分。俺は寝惚け眼をこすりながら、TVの前に座る。『ぼのぼの』を観るためだ。これを観るときはね、誰にも邪魔されず、自由でなんというか救われてなきゃあダメなんだ。独りで静かで豊かで……振り返れば、今年は味わい深い話が多かった。39話「天誅ごっこをしよう」、50話「おねえさんはなやんでる」、81話「ぼのちゃん~たってみよう」。どれを選んだっていいんだ。今日は88話にしよう。一抹の優しさを見せるショーねえちゃんと、いつも通り手加減のないオチがたまらないこの話数に。

 

■『Fate/Apocrypha』第22話「再会と別離」

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脚本/三輪清宗 絵コンテ・演出/伍 柏輸 作画監督/伍 柏輸、浜友里恵、りお

TVアニメで極稀に起こる急激な爆発の化学反応。器となる作品、監督、プロデューサー、野心的な仕掛け人とアニメーターが揃って起こる大爆発。「あの22話の伍柏輸」、もうそれで通じるはずだ。冒頭のアタランテがそうだったように、はからずも物語の中で起こった「変質」と超絶的なアニメートが結びついているところに感興が立つ。エフェクトもアクションも、物質が変じるがごとく形を変え、ポーズを変え、タイミングを変えて襲い掛かってくる、その面白さ。作り手の熱情とイマジネーションに感謝を注ぎ、コマ送りだ。

最後まで悩んだのは『ボールルームへようこそ』『3月のライオン』『このはな綺憚』の3作品。国内で制作されたアニメではないが、何故かよく観ている『きかんしゃトーマス』も選ぼうかどうか迷った。他、リッチな作画とウユニ塩湖のインパクトが忘れられないアンパンマン1375話「アンパンマンとどろんこ魔王」、欲望に忠実な『シルバニアファミリーミニストーリー』も候補に挙げていた。

さあ、来年もよきTVアニメに出会えますように……!