boogyman's memo

アニメーションと余日のメモ欄

話数単位で選ぶ、2023年TVアニメ10選

歳末の慣例行事、年の瀬のアニメブログ企画「話数単位で選ぶ」に今年も参加。干支が一周しても、企画はつづくよ、どこまでも。企画主旨・集計はいつもお世話になっている「aninado」でぜひ。 以下、簡易コメント付きでリストアップ。 ■『お兄ちゃんはおしま…

『めぞん一刻』89話の名脚色

長くテレ玉で再放送中の『めぞん一刻』が佳境を迎えている。 響子を巡るライバルの三鷹が大いなる勘違いによって明日菜とめでたく婚約し、これで一段落かと思いきや、お次は五代の彼女(だと自身では思っている)こずえの活躍(?)でまた一波乱……というとこ…

話数単位で選ぶ、2022年TVアニメ10選+京都な4本

歳末のアニメファン企画、年間のTVシリーズの中からベストエピソードを選出する「話数単位で選ぶ、TVアニメ10選」(昨今はNetflixのシリーズも含めているけれど)エントリ。参加サイトの一覧など詳細は、昨年に引き続き「aninado」でぜひ。 以下、コメント付…

『であいもん』のO.Lとアイディアメモ

和菓子と煎茶のいい香りを漂わせながら、人情の機微に触れるドラマ。TVアニメ『であいもん』は色合いも風情も、そして演出も端正で落ち着いた作品だった。派手さはないが心に残る、そんな志向で作られたアニメだったように思うが、あまり見掛けない、工夫を…

『ルパン三世 PART6』大空スバル出演回 

先日放送された『ルパン三世 PART6』17話 「0.1秒に懸けろ」にホロライブプロダクション所属のバーチャルYouTuber「大空スバル」が出演していた。これは人気VTuberがレギュラー出演する番組「プロジェクトV」内で行われた「ルパン三世の声優権」を争奪すると…

『ToHeart』再見 第13話「雪の降る日」

月刊アニメージュに連載されている“長寿”インタビュー企画「この人に話を聞きたい」にあって、忘れられない回のひとつが「高橋ナオヒト」の第四十二回だ。2002年4月号に掲載されたそのインタビューは、『鋼鉄天使くるみ』『フィギュア17 つばさ&ヒカル』 な…

『ToHeart』再見 第8話「おだやかな時刻」

ひとつ屋根の下、年頃の男女が小さなのテーブルにノートをひろげ、試験勉強をする。そんな思春期の妄想を掻き立てられる状況で、まったく逆の平々凡々、普段着の装いでファンを驚かせたアニメがあった。 TVアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』には「サムデイ イン ザ…

『ToHeart』再見 第5話「青い空の下で」

突然始まる野球回、なんてフレーズはいまや定番になった。「野球回」はTVアニメに於ける箸休め的な役割を持った“遊び回”の代名詞だが、他にもサッカー回や水着回、温泉回という言い回しも定着しているし、学校が舞台の作品であれば修学旅行、文化祭などの年…

『ToHeart』再見 第1話「新しい朝」

近頃、自分の中で『ToHeart』ブームが再燃している。たまたま観返す機会があり、改めて高橋ナオヒト監督と千羽由利子作画の手腕に惚れ直している次第。TVアニメ版の特徴は、日常芝居を中心とした実写的雰囲気を打ち出し、「原作のアニメ化」から離れ、監督が…

話数単位で選ぶ、2021年TVアニメ10選+2

年末が近づくと思い出すTVアニメのエピソード選出企画、「話数単位で選ぶ、TVアニメ10選」のエントリ。企画参加サイトの一覧は昨年同様「aninado」でチェック。 以下、コメント付きでリストアップ。 ■『ぶらどらぶ』第4話「サラマンダーの夜」 脚本・絵コン…

『小林さんちのメイドラゴンS』初回演出メモ(オマケもあります)

京都アニメーションがTVアニメの世界へ帰ってきた。シリーズ第2期となる『小林さんちのメイドラゴンS』は監督を石原立也に引き継いでの再スタート。「シリーズ監督」にクレジットされた第1期監督・武本康弘との違いはもちろん、美術/色彩/撮影の各監督が変…

古畑か、コロンボか

「再放送で観たドラマ」というジャンルの「海外編」があれば、『刑事コロンボ』はそのランキング上位に挙がる筆頭だろう。かくいう自分も再放送でコロンボワールドに引きずり込まれたひとりだが、きっかけとなったのは三谷幸喜脚本の『古畑任三郎』だ。「倒…

読んでみたい劇場アニメーション絵コンテ集10 

映像研究兼ファンアイテムとして、話題作・ヒット作の絵コンテ集が商業出版されるようになって久しいが、全体から見ればその数はごくわずか。これは個人的にいつかコンテを読んでみたいと思っている劇場アニメーションの一覧(一部)だ。 『ガリバーの宇宙旅…

『シン・エヴァンゲリオン劇場版』と『大誘拐』

庵野秀明作品における岡本喜八へのリスペクトはよく知られたところだ。古くは『トップをねらえ!』の『激動の昭和史 沖縄決戦』オマージュ、近年でも『日本のいちばん長い日』が『シン・ゴジラ』のベースになっているなど、その影響は計り知れない。とりわけ…

『のんのんびより のんすとっぷ』8話の背中と変化、本心について

今期、「脚本」や「構成」に注目しているTVアニメをひとつ挙げるとしたら、迷うことなく『のんのんびより のんすとっぷ』だ。シリーズ第3期となる今作も概ね原作準拠の映像化だが、エピソードの順番を入れ替えたり、オリジナル描写の工夫によって絶妙な味わ…

話数単位で選ぶ、2020年TVアニメ10選

年の瀬の恒例企画、今年放送されたTVアニメの中からエピソード単位で10本選ぶ、「話数単位で選ぶ、TVアニメ10選」。参加サイトは新米小僧さんからバトンを受け継いだ「aninado」をチェック! 以下、コメント付きでリストアップ。 ■『ねこねこ日本史』 第123…

アムロとブラと今 敏

『機動戦士ガンダム』17話「アムロ脱走」には有名な「ミライの干してあるブラジャーに赤面するアムロ」というシーンがある。先日、久しぶりにその初心なアムロの一面を見て、頭の片隅にふと「吊ったブラ」が印象的なアニメは他にもあったはずだ、なんだった…

とある吉田玲子のダイアローグ 週雑006

前記事の補足も兼ねて。 『水色時代』第43「思い出アルバム4 はじめての友達」の終盤、優子のお隣さんで幼馴染・博士が落ちたブレーカーを上げて、帰った後のダイアローグ。 北野「あたし帰る!」優子「え?」北野「帰る!」優子「北野さん! 北野さん帰らな…

吉田玲子の「水色時代」

本打ちは乙女の赤い血問題で揺れていた。 こんな書き出しで始まる文章がある。2000年に刊行された「アニメスタイル」第2号に寄せられた若き日(といってもデビューからそれなりに年数は経っている)のシナリオライター・吉田玲子によるコラム。「自作を語る…

「鬼滅の刃」と「未来福音」 

まさに待望の一冊。話題の『鬼滅の刃』最終巻を先週、発売日に買って読んだ。 単行本の加筆・修正で印象の変わるマンガは少なくないが、『鬼滅の刃』の場合、元々帯びていたメッセージ性が加筆によってより深く読者の胸に届くように描かれており、読後の余韻…

「ハーケン」の意味 

まさか、は突然やってくる。『ハイキュー!! TO THE TOP』15話の本放送を観ていて、『ハイキュー!!』で、いや松下慶子班のアニメでこんな乱れ方をすることがあるのかと思った。 松下慶子プロデューサーは『ももへの手紙』をはじめ、『うさぎドロップ』『げん…

虎杖将監論 

虎杖将監(いたどり しょうげん)は『ストレンヂア 無皇刃譚』(安藤真裕監督/2007)の登場人物のひとりで、国盗りの野心を持つ男だ。大塚明夫の好演もあり、歴戦の将たる貫録を漂わせているのだが、金髪碧眼の剣士・羅狼との一騎打ちの最中、不意の凶弾に斃…

黒澤明の演出方針

11月8日に放送された「黒澤明の映画はこう作られた〜証言・秘蔵資料からよみがえる巨匠の制作現場〜」で興味深い資料が紹介されていた。スタッフにだけ配布したという自身の演出プランを語った文章だ。 「私の演出方針大要」 俳優の演技は演技を感じさせては…

土曜日の新人たち

筆不精が続き、無理矢理にでも何か書く機会を設けねば! と奮い立つも、日々の更新は難しい……ということで、「呑み」同人サークル・かるこーるぞくやアニメ関連の同人誌作りなど、マルチな活躍をしている機長さんに倣い、週間単位の雑記を残していきたいと思…

『波よ聞いてくれ』12話の信頼とアドリブ

俺、映画でもアニメでも、原作に忠実であるべきだとは決して思わないんですよ。その道のプロが最善と考える見せ方をしていただければOKで。 これは「アフタヌーン」2020年2月号の誌面対談で南川達馬監督に原作の沙村広明が語っていた言葉だ。形式上、多少の…

演出メモ/『空の青さを知る人よ』

『空の青さを知る人よ』は秩父三部作の集大成と謳われているが、「超平和バスターズ」作品としても、完結編的な映画だと思う。演出にしろ作劇にしろ、語り口に迷ってしまうほど密度があり、一つ一つに込められた意味が重い。言ってしまえば、「だれから/ど…

アクアの輪っかと金崎演出

『この素晴らしい世界に祝福を!』は何度観ても笑って騒いでたまにしんみりして、心の底からスカッとした気持ちにさせてくれるアニメだ。今回はそんな『このすば』に登場する水の女神・アクアの「輪っか」について書いてみようと思う。 アクアの髪型はかなり…

『リズと青い鳥』の下校シーンとシンクロ

凛とした朝の空気の中、軽快な足音が響く。鎧塚みぞれはその音を聞いて、傘木希美の気配を察する。校門から聞こえてくる足音は、物語の始まりを告げる音だ。そして校門につづく階段を降りる足音、これはふたりの少女が鳥籠から出ていく音。『リズと青い鳥』…

「アニゲー☆イレブン」あおきえい出演回の新房格言

BS11「アニゲー☆イレブン!」3月6日放送回に『ID: INVADED イド:インヴェイデッド』のあおきえい監督、キャラクターデザイン・総作画監督を務める碇谷敦の両名がゲスト出演。 あおき監督による絵コンテの極意を説明する(実現可能であるか/面白いか、面白…

『秒速5センチメートル』の明滅と点滅

1995年3月4日、大雪の降りしきる中、遠野貴樹は離ればなれになった篠原明里に会い行った。これは『秒速5センチメートル』第1話「桜花抄」の出来事だ。映画の公開が2007年3月3日だから、いま振り返れば作中の時間経過より長い月日が流れたことになる。 そんな…