boogyman's memo

アニメーションと余日のメモ欄

演出メモ/『22/7』7話 絵コンテ・演出/森大貴

性質的にTVアニメは予期せぬ出会いが起こりやすい。 『22/7』(ナナブンノニジュウニ)第7話「ハッピー☆ジェット☆コースター」は集団食中毒という突発的でエキセントリックな導入から、まさしく予期せぬ物語になった好例だ。主役は一人食中毒を免れた戸田ジュ…

中野英明虎王伝説・総集編

2010年代中盤、格闘小説『餓狼伝』に登場する竹宮流の秘奥「虎王」が、何故だか(一部の)アニメを賑わせていた。仕掛け人は板垣恵介版・マンガ『餓狼伝』を愛読していたであろう演出家、中野英明。 以前、中野英明回で虎王が使用されるたびに記事を書いてい…

話数単位で選ぶ、2019年TVアニメ10選

年の瀬が近づくと始まる企画、今年放送されたTVアニメの中からエピソード単位で10本選ぶ、「話数単位で選ぶ、TVアニメ10選」。 以下、コメント付きでリストアップ。 ■『風が強く吹いている』 第23話「それは風の中に」 脚本/喜安浩平 絵コンテ・演出/野村…

『さすがの猿飛』28話の回し蹴りメモ

「NHK NEWS WEB 京アニ・つなぐ思い」のページに11月25日付けで「子どもに夢を ~“天才アニメーター” の素顔~」という記事が掲載された。これはアニメーター・木上益治の軌跡を辿る貴重な証言集。その中であにまる屋時代の同僚・奈須川充さんが『さすがの猿…

『ちはやふる3』の汗と浅香守生

6年ぶりのTVシリーズ第3期、『ちはやふる3』を観て思うことは、ひたすら純粋に「面白い」だ。競技かるたに懸ける情熱も、青春群像劇の中で絡み合う恋模様も、ずっと観ていたくなる。原作の勘所をつかまえる抜かりなさ、緊張感を孕みつつ、テンポ良く進める手…

『バビロン』2話の演出について

平衡感覚という言葉がある。比喩的にも使われるが、からだのバランスを敏感に察知し、それを保つ感覚のことだ。であるならば、野崎まどの同名小説をTVアニメ化した『バビロン』第2話に登場する平松絵見子こと「曲世愛」(まがせ あい)は、人の平衡感覚を失…

木上益治とプロレス

詳しい素性はわからない。けれど、非の打ち所がないその実力はファンならだれでも知っている――それが木上益治という人だった。 監督を務めた『MUNTO』シリーズのDVD特典でオーディオコメンタリーに出演したり、メイキング映像に顔出しをしている以外、ほとん…

『ソウナンですか?』エンディングと渋谷亮介

無人島に漂着した女子高生4人のサバイバル。TVアニメ『ソウナンですか?』は悲観的な状況に置かれていながら、父親仕込みのサバイバル術を持つ鬼島ほまれを中心に、マニアックな描写を挟みつつ、女子高生らしくお喋りの尽きない無人島生活を送る一風変わった…

感想/『ヴァイオレット・エヴァーガーデン 外伝 - 永遠と自動手記人形 -』

ヴァイオレット・エヴァーガーデン。考えてみると、これは潔いタイトルだ。名は体を表すという言葉があるが、本作に関して言えばTVシリーズの頃から、名前に物語が宿っている。名を呼ぶことが、ドラマなのだ。 イザベラ・ヨークことエイミー・バートレットと…

演出メモ/『ロード・エルメロイII世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-』6話

『ロード・エルメロイII世の事件簿 -魔眼蒐集列車 Grace note-』第6話は恒例のあおきえい絵コンテ回。偶然なのか狙っているのか、TROYCAの加藤誠監督作品(『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』『やがて君になる』)にあおきえいがコンテ参加するときは…

東京、選択、反射――『天気の子』感想

新海誠最新作『天気の子』は身も蓋もなく言えば、「東京」の映画だ。「東京」と「新海誠」の関係は過去の作品群を振り返っても明らか。時に憧憬として、時に焦燥として、そして交差する場所として扱われている。もしかしたら、新海誠という人を映す鏡のよう…

『どんぐりの家』と安濃高志

アニメーション映画『どんぐりの家』を久しぶりに観た。以前に観たのは何かの上映会だったはずで、もう20年近く鑑賞する機会がなかったのだけど、安濃高志監督の演出について確認したいことがあって視聴。細部まで観直すことができた。 『どんぐりの家』は山…

新海誠が描いてきた雨――『天気の子』公開に寄せて

新海誠監督の最新作『天気の子』の公開がいよいよ目前まで迫っている。 予告編を見ても明らかなように『天気の子』のテーマに「雨」が深く関係しているのは間違いない。連日降り続く雨と“100%の晴れ女”というキーワード、それが世界をどんな風に動かしていく…

『シティーハンター2』17話の2人原画と一肌

『劇場版シティーハンター 〈新宿プライベート・アイズ〉』が封切りされた頃に書こうと思っていた『シティーハンター2』17話についてのエントリ。 それは以前、西村誠芳さんがこんなツイートをしていたことが発端だ。 @mutaguti2 自分からバラすけど、シティ…

話数単位で選ぶ、2018年TVアニメ10選

年末恒例の企画、今年放送されたTVアニメの中からエピソード単位で10本選ぶ、「話数単位で選ぶ、TVアニメ10選」。 以下、コメント付きでリストアップ。 ■ 『恋は雨上がりのように』 第12話「つゆのあとさき」 脚本/赤尾でこ 絵コンテ/渡辺歩 演出/益山亮…

青い鳥を待つ図書委員

『リズと青い鳥』の登場人物の中で、おそらく最も物怖じせず、鎧塚みぞれに正対するキャラクターは「図書委員」と名付けられた彼女だ。心が揺れる、感情が揺れる、ポニーテールが揺れる。様々なものが「揺れる」本作にあって、図書委員は下級生でありながら…

22/7「あの日の彼女たち」考 day04 佐藤麗華

22/7 「あの日の彼女たち」day04 佐藤麗華 映像におけるファーストシーン、ファーストカットは特別だ。そこで引き込まれるかどうか、視聴意欲をかき立てられるか否か。それがすべてではないにしろ、やはり主張のある切り出し方をするものにより惹かれるし、…

22/7「あの日の彼女たち」考 day03 立川絢香

22/7 「あの日の彼女たち」day03 立川絢香 立川絢香は真意を悟らせない。 「あの日の彼女たち」キャラクターPVの中で最も鮮烈なイメージを残す1本かもしれない。「day03」の舞台は帰宅途中だと思われる列車内。映像的には「開く」ところから始まり、「閉まっ…

22/7「あの日の彼女たち」考 day02 河野都

22/7 「あの日の彼女たち」day02 河野都 「day02 河野都」は要約すれば、「ファミレスのコールボタン*1をいつ押すか」という話。にぎやかな場所を舞台にしているためか、雰囲気は明るく、空気感や色合いもはっきりしていてどこかコメディタッチ。明朗快活、…

22/7「あの日の彼女たち」考 day01 滝川みう

以前まとめたエントリを書いたのだけど、22/7「あの日の彼女たち」キャラクターPVをリピート再生しているうちに、順を追ってもう一度書きたくなった。 今回は「day01 滝川みう」を取り上げてみたい。 22/7 「あの日の彼女たち」day01 滝川みう PVのスタート…

ビデオコンテの資料性――『さよならの朝に約束の花をかざろう』

「岡田麿里の描く絵コンテ」に興味があった。映画『さよならの朝に約束の花をかざろう』は都合7人が絵コンテにクレジットされているが、個性派揃いの演出陣にあって目を引く絵コンテ/岡田麿里の存在感。いったいどんなコンテを、そもそもどんな絵を描いてい…

「復讐の赤い牙」のインパクト

木村圭市郎さんの逝去。仕方がないことだけれど、やはり寂しい。思えばインタビューやイベントで拝見するたび、気迫のこもった口調にたじろぎながらも、その豪快な人柄にどこか励まされていた。生涯現役を標榜し、やり遂げようとする生き様に憧れていたのか…

『SSSS.GRIDMAN』導入部の演出/情報量

謎に満ちていて、否応なしに引き込まれてしまう。目と耳を凝らして何かないかと探ってしまう。雨宮哲監督の『SSSS.GRIDMAN』は用心深く、視聴者を刺激する。 中でも、物語の導入部にあたる第1話「覚・醒」の演出はじつにミステリアスだった。記憶喪失の主人…

TROYKAの遮断機/七海燈子の踏切

『やがて君になる』は演出に凝ったアニメだ。小糸侑と七海燈子、ふたりの心情を様々なフレーム、境界線によって描き出そうとしている。そのひとつ、「踏切」についての小話。 踏切は電車や人々が行き交う日常的な場所でありながら、「線」が多く、心理的距離…

『色づく世界の明日から』と篠原俊哉のポッキー

P.A.WORKS×篠原俊哉の新作『色づく世界の明日から』が始まった。魔法の使える社会で魔法が使えず、幼い頃に色覚を失ってしまい、灰色の世界を見つめてきた少女・月白瞳美が祖母の時間魔法によって突然60年前へと渡るファンタジックな作品だ。 第1話Aパートで…

22/7「あの日の彼女たち」の演出、魅力

22/7「あの日の彼女たち」キャラクターPV day06 丸山あかね、day07 戸田ジュンが公開されていた。今回は詳細なスタッフ情報が掲載されており、一部で噂されていた通り、アニメーション制作はCloverWorks、監督に若林信、キャラクターデザイン・作画監督には…

『恋は雨上がりのように』12話の詩情

格別な詩情が溢れ出したアニメ、そう呼びたくなる。先日、完結を迎えた原作の最終回も読んでいたが、TVアニメ『恋は雨上がりのように』の締め括り方は澄明な感慨を抱かせるものだった。 徹夜で執筆活動を行う近藤と起き抜けにストップウォッチアプリを操作す…

『恋は雨上がりのように』 #8

「続きが読みたいとも思いました。」 これは補習を受けていたあきらが、【あなたは下人のとった行動をどう思いますか? 自由に書きなさい。】という『羅生門』の問題に対して、「下人の勇気が、今後の彼の人生にプラスに働けばいいなぁと思います。」と書い…

『恋は雨上がりのように』 #7

夜の青い光の中、カーテンに伝う雨雫の影。 『恋は雨上がりのように』7話Bパート、雷が落ちて停電した後、ずっとテーブルに伏せっていたあきらが身を起こすシーンの美しさ、緊張感はただごとではなかった。 青白く照らしていた外の光がカット内で変化し、画…

『恋は雨上がりのように』6話の構成力、演出

『恋は雨上がりのように』は構成力に唸らされるアニメだ。 原作付きのアニメを観るとき、原作既読の状態が必ずしも好ましいとはかぎらないが、本作はシリーズ構成、各話の構成、ともに原作ファンの目で観ても「こう来たか」と思わせる仕掛けがある。アニメ第…