boogyman's memo

アニメーションと余日のメモ欄

話数単位で選ぶ、2018年TVアニメ10選

年末恒例の企画、今年放送されたTVアニメの中からエピソード単位で10本選ぶ、「話数単位で選ぶ、TVアニメ10選」。

以下、コメント付きでリストアップ。

■ 『恋は雨上がりのように』 第12話「つゆのあとさき」

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脚本/赤尾でこ 絵コンテ/渡辺歩 演出/益山亮司、河野亜矢子 作画監督/加藤万由子、小磯由佳、荒尾英幸、清水慶太、西原恵利香、奥田明世、竹本佳子、長原圭太、山本祐子

数本の監督作を抱える多忙な演出家・渡辺歩の“本気”を久しぶりに見た思いがした本作。渡辺演出の真骨頂は『のび太結婚前夜』に代表されるように叙情性を持って人物の内面を描くことだ。そして、ここぞというときには労を惜しまない画作りをする。青空の反射する水溜りの上を走り出したあきら、抱き止める近藤、二人を回り込みで祝福するカメラワーク。ありえたかもしれない未来と踏み出すための約束。後には雨上がりの空の余韻がいつまでも残る。「結婚前夜」の渡辺歩は、青春を忘れていなかった。

関連記事:『恋は雨上がりのように』12話の詩情

 ■『ゆるキャン△』 第5話「二つのキャンプ、二人の景色」

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脚本/伊藤睦美 絵コンテ/京極義昭 演出/鎌仲史陽 作画監督大島美和、堤谷典子

それぞれのスタイル、それぞれのキャンプ。一緒にいなくても同じ景色を共有できる。『ゆるキャン△』的なメッセージ性の強い第5話は京極監督のコンテワークも冴え、賑やかなキャンプ描写から静かな感動を呼ぶラストシーンへの転換が見事。注目の集まったアバンの犬子ブラの重量感も設営よろしく、リアリティを追求する一環だったのかもしれない。

■『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』 第5話「人を結ぶ手紙を書くのか?」

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脚本/鈴木貴昭 絵コンテ/山田尚子 演出/藤田春香、澤真平 作画監督/植野千世子

印象的なエピソードが並ぶシリーズにあって、宮廷女官と王女の絆を描いた一編を山田尚子が担当。絵コンテのみの参加であるにもかかわらず、特徴的なレイアウト、表情芝居、視線誘導など存分に個性を発揮。植野千世子の修正も素晴らしく、寓話的な物語に人の手のあたたかみ、たしかな実感を与えている。ただ一点、サブタイトルだけはもう少し内容に即した物でもよかったのではないかと思った。京都アニメーションのご愛嬌。

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■『宇宙よりも遠い場所』 第13話「きっとまた旅に出る」

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脚本/花田十輝 絵コンテ・演出/いしづかあつこ 作画監督吉松孝博、室山祥子

『よりもい』は友情を巡る物語だ。旅が終わると、旅の仲間とは解散する。しかし離れることで新しい友情が始まる。離れている間に、目の前にいない相手のことを考える時間が育まれる。終わりは、終わりじゃない。そのシンプルで力強い友情の形を13話かけて見せてもらった。これでもかというくらい積み上げた最後の最後、圧巻はラスト30秒だ。「残念だったな」の返信に添えられた一枚の画像。目元を震わせながら涙を溜めて、それでも笑っていたキマリと同じ顔を、あの時の自分はきっとしていただろう。

■『あまんちゅ!〜あどばんす〜』 第4話「秋とふわりふわりの幸せのコト」

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脚本/福田裕子 絵コンテ/佐山聖子 演出/佐々木純人 作画監督/加藤愛、高橋みか、鈴木彩

秋の素敵をてことぴかりが各々違うところで発見する、ちょっと不思議で安らぐ小話。空想する夢の中、秋の味覚、桜紅葉の美しさ、急かさずゆっくりと穏やかな時間を自分たちのペースで楽しむ。佐山聖子監督は今年も大車輪の活躍。アクセントの打ち方が心地良く、いつでも安心して観ていられる。

 ■『ハイスコアガール』 第3話「ROUND3」

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脚本/浦畑達彦 絵コンテ・演出/山川吉樹

いつもの駄菓子屋、いつもの『ストⅡ』筐体。けれど晶の様子がおかしい。目が眩むほどの日差しを浴び、出口で佇む晶の様子はまるで消えゆくかのようで――耳をつんざく蝉時雨、何も語らない晶の胸の内を無言のまま物語るアバンタイトルの切なさは絶品。対照的に己の心と向き合い、空港へ駆け出すハルオのシークエンスは雄弁で『ハイスコアガール』を映像化することの意義を、改めて感じた瞬間でもあった。遊び心とドラマ作り、山川吉樹監督の手腕が光る好編だ。

 ■『ウマ娘 プリティーダービー』 第13話「響け、ファンファーレ!」

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脚本/杉浦理史 絵コンテ/及川啓 演出/太田知章、及川啓、許琮、本間修、今泉賢一、阿部ゆり子 作画監督椛島洋介、辻智子、井上裕亮、宮崎司、小島明日香、宮下雄次、合田真さ美、阿部美佐緒、川面恒介、秋山有希、若山正志、河野直人、伊礼えり

サイレンススズカが逃げて、マルゼンスキーが二番手、その後ろにダイワスカーレット、そんな世代を超えた競馬ファンの夢が実現したドリームマッチ。誰が勝ってもおかしくない超豪華メンバー、手に汗握るレース展開、しかしもっとも胸を熱くさせるのは、レースの外から見守ることしかできないトレーナーの決意だ。思えば、同じP.A.WORKS制作の『SHIROBAKO』もそうだった。夢を叶えた人を応援し、見届ける人がいる。その構図が感動的なのだ。

■『アイカツフレンズ!』 第23話「叫ぶ、瞬間」

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脚本・絵コンテ・演出/京極尚彦 作画監督/秋津達哉

スペシャルな演出家と新進気鋭のアニメーターがタッグを組んだ、蝶乃舞花が蝶乃舞花であることを思い切り証明した話数。物語を劇的に盛り上げる術を熟知した京極イズムが所狭しと散りばめられ、天候のコントロール、クロスカッティング、ゲストキャラクターの存在感、唯一無二の迫力があった。中でも舞花の兄・舞人の少ない口数に秘められた闘志、思いやりが心に響く。飛ぶんだ!

キラッとプリ☆チャン』 第31話「マンガの現場いってみた!」

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脚本/佐藤裕 絵コンテ/博史池畠 演出/米田光宏 作画監修/斉藤里枝、川島尚

怒涛の秋田書店ネタを繰り出した『プリ☆チャン』屈指の変化球、いやビーンボール。緒方恵美演じる濃すぎる編集「神戸」と永辻まとん先生の掛け合い漫才のようなやり取りに潜む、ブラックなパロディの数々。「機械に砂を撒くといっとけ」(輪転機に砂を入れる)という台詞や手塚治虫をモデルにしたであろう漫画ゴッドロボ1号の爆発オチ、容赦のない展開がいっそ清々しい。博史池畠監督の面目躍如だ。

■『やがて君になる』 第6話「言葉は閉じ込めて/言葉で閉じ込めて」

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脚本/花田十輝 絵コンテ/あおきえい 演出/渡部周 作画監督/仁井学

喰霊-零-』が終わった辺りからだったか、絵コンテ/あおきえいというクレジットが様々な作品を賑わせていた時期があった。抜群の演出力を武器に、ファンを魅了しては去っていく各話コンテの侍。TROYCA取締役、看板監督となった今、その刀の切れ味に変わりはないのか――。一目見れば分かる。錆びつかせていなかった。誰がやるだろう、あんな眼鏡の使い方を。だれが思いつくだろう、あんな河原の仕掛けを。侍・あおきえい、その腕前に一切の翳りなし。

 

他、『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』『ヤマノススメ サードシーズン』『SSSS.GRIDMAN』『ダーリン・イン・ザ・フランキス高雄統子回、『ブラッククローバー』63話など、候補に挙げていた作品は数知れず。結果的に気負いなく何度も鑑賞したものを中心にチョイス。今年はPN・ひらがな系アニメーターの活躍やNetflix配信、『あの日の彼女たち』『ベイビーアイラブユーだぜ』といったWeb公開作品も話題をさらい、折に触れて「TVアニメ」の枠組みを自分なりに再考しなければなあ、と思うことしきりの一年だった。

来年はどんなアニメーションに、どの媒体で出会えるのか。楽しみに待ちたい。