boogyman's memo

アニメーションと余日のメモ欄

読んでみたい劇場アニメーション絵コンテ集10 

映像研究兼ファンアイテムとして、話題作・ヒット作の絵コンテ集が商業出版されるようになって久しいが、全体から見ればその数はごくわずか。これは個人的にいつかコンテを読んでみたいと思っている劇場アニメーションの一覧(一部)だ。

数年前までは『人狼 JIN-ROH』(沖浦啓之/2000)もこの一覧に入っていたのだけど、2018年末にめでたく単行本化された。おかげで今 敏コンテに比肩する「緻密系」の最高峰が商業流通の絵コンテ集となり、書棚にならぶことになった。そうした"描き込み"の観点からいうと、オムニバスの『迷宮物語』を例外とすれば、密度感の近いコンテの筆頭はおそらく『魔界大冒険』だろう。数ある「芝山ドラ」で何故『魔界大冒険』なのか、それは原恵一監督が感銘を受けたと公言しているコンテだからだ*1。そんな原恵一の『戦国大合戦』や富野由悠季逆襲のシャア』『F91』は関連書籍・ブックレットに一部が掲載されていたり、展示会で読める機会もありはするものの、やはり全編手元に置いてじっくり分析したい。

ガリバーの宇宙旅行』と『哀しみのベラドンナ』は若干毛色が異なるものかもしれない。前者はアニメーターに委任されているシークエンス(森康二パートなど)の比較、くわえて「当時動画スタッフだった宮崎駿の提案による変更シーン」を検証したいという思いもある*2。実験アニメーションである『ベラドンナ』はまず大量のイメージボードが下敷きにある作品で、コンテの全体像がどんな形になっているのか興味が尽きない。実験という意味では『ビューティフル・ドリーマー』も負けていないだろう。一応、脚本・コンテは「うる星やつら 記録全集 演出資料編」(形式上は同人誌)に収録されているが、容易に手に入るものではないため、知名度から言って商業出版して欲しいタイトルだ。そして押井守とうる星時代を共に過ごしてきた安濃高志監督の『どんぐりの家』は、ろう重複障害者の苦闘と自立を描いた長編ドキュメンタル。あの心情表現の極致が絵コンテでは一体どうなっているのか、ぜひ知りたい。

挙げていけば、まだまだ『リズと青い鳥』(これもブックレットに一部のみ掲載)や『老人Z』、『劇場版 美少女戦士セーラームーンR』に『エスパー魔美 星空のダンシングドール』等々キリがないのだけど、せっかくの機会なので「ちょっと扱いに困るコンテ」について書いて終わりたい。それは電子書籍・アプリが実装される以前にデジタル形式で収録されたコンテだ。限定版のいわゆる特典ディスクがその顕著な例で、コンテのピクチャーだけしか映っていなかったり(ト書き・セリフがない)、レスポンスが極端に悪かったり、まあ諸々痒くなるディスクも少なくなかった。そのころに比べると、コンテを巡る環境は格段に良くなった。が、やはり自分は紙媒体でコンテを読みたい派だ。絵コンテに付箋を貼ってパッと気になったページを開けるようにする。その作業が好きなのかもしれない。

 

人狼 JIN-ROH 沖浦啓之絵コンテ集

人狼 JIN-ROH 沖浦啓之絵コンテ集

 

*1:「アニメーション監督 原恵一」参照。

*2:実際には宮崎一人で変えられるものではなく、演出担当者や班全体の意向もあったと思われ、逸話を鵜吞みにはできない。