boogyman's memo

アニメーションと余日のメモ欄

『シティーハンター2』17話の2人原画と一肌

『劇場版シティーハンター 〈新宿プライベート・アイズ〉』が封切りされた頃に書こうと思っていた『シティーハンター2』17話についてのエントリ。

それは以前、西村誠芳さんがこんなツイートをしていたことが発端だ。

性質の異なる原画が少人数で描いているため、絵柄やタイミングがシーン単位で変わり、誰が描いたのか一目瞭然だという現象は昭和~平成初期*1でよく見られた光景だった(量的には減ったものの、今でもある)。だから作画マニアだったり、特定のアニメーターを追いかけるファンには記憶されやすい傾向にあるのだけど、『シティーハンター2』17話「大和撫子志願!? モッコリは国境を越えて(前編)」はまた別の筋からも有名な回で、「ああ、これは2人原画だったのか」とちょっとした発見というか、驚きがあった。

持って回った言い方をしてしまったけれど、別の筋とは「警視庁の女狐」と呼ばれる美人刑事・野上冴子のお色気方面だ。冴子のサービスが顕著な17話Aパートは、ハイジャック犯への身代金受け渡しの役を買って出た冴子が、下着姿で犯人の目を引き付けておき、無線で確認するといって操縦室に連れていき、犯人の姿を捉えた冴羽獠がお得意の超ピンポイント狙撃で解決、と『シティーハンター』らしい流れ。重要なのは、普段ガードの堅い冴子が文字通り一肌脱いでいることだ。

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切迫した状況にもかかわらず、獠は冴子のブラ紐を正確に撃ち抜く神業を披露する。そして『シティーハンターTVシリーズ史上で唯一、冴子の乳首が露出する。

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カット頭のわずか2コマだけ薄く乳首が描かれているが、コマ送りなしで視認するのは困難だ。が、オッパイに懸ける情熱の賜物か、冴子のサービスカットと言えばコレという認識がされている(と思う)。

冴子のオッパイだけではなく、このAパートは西澤晋的見どころも多く、特に角ばったモブ描写がたまらない。

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工夫のある表現もいい。これは冴子がハイジャックされた旅客機に歩いて向かう際に起こる蜃気楼。

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真夏の直射日光によってアスファルトが熱せられて起こるゆらゆらとした蜃気楼や逃げ水は、撮影で行われるケースがよく見られる中、ここでは作画と組み合わせて再現。実体を掴ませない冴子のキャラクターが強調されている。実験的でおもしろい表現だ。

なお、BパートはAパートに比べ、アニメ的な誇張とコミカルな芝居が特徴的で2人原画の利点というべきか、方向性の違いをはっきりと見て取れる。後に超人的な作画スケジュールをこなす西村誠芳と今もってスケジュールを支え続けるコンテ職人・西澤晋が組んでいたというのは、妙に感じ入ってしまうところもあるけれど、それはまた別の話。

ちなみに、この記事では「シティーハンター」とカタカナで表記している作品名は、本来なら「CITY HUNTER」と書いた方がベターかもしれない。この表記揺れについてはアニメ様365日第354回『CITY HUNTER』に詳しい。ご一読あれ。

 

*1:シティーハンター2』は1988年4月から1989年7月まで放送されており、昭和から平成に移ったTVアニメの一本。